発行人からのメッセージ

クルミド出版

発行人からのメッセージ

本をつくることになりました。

いえいえ、ずっと出版業がやりたかったんだとか これからの出版ビジネスにはチャンスがあるんだとか そういうことではないんです。

クルミドコーヒーを4年やってきて感じたのは 「表現」の可能性ということ。

詩や歌や絵画だけに限らず、 挨拶や感謝の言葉など、日々の儀礼にも似たものも含め、 『表現』とは、その人を鼓舞し、その人の本来以上の力を発揮させるためにある。
そしてそれは、次第に影響し合い波及に波及を重ね、 いずれは、元々は達成不可能と思われた何かを達成しうる。
この作品は、我々の日々の暮らしは、そのつもりで戦いさえすれば、 いずれ嘘みたいな 奇跡のような人間の良い面を開花させる戦いなのだという希望を提示している。
声高にではなく、あっさりと、そして軽妙に。 なぜならその戦いは、我々の日々の営みにあるもので、 そんな大仰なものではないのだから。

あるラジオ番組の中で その番組のパーソナリティの方が とある映画を評して語られていたものです。

お店のこと、言ってくださるように感じ 大きな大きな勇気、いただきました。

ぼくらは、片田舎のしがない喫茶店でしかないけれど それでも ひとつの挨拶から 一杯の珈琲から 世界をつくれるかもしれないんだと 言ってくださっているように感じたのです。


そんなときに、2人の女性と出会いました。 2人とも、文章を書きためていました。

2人は決して プロの作家というわけではありません。 有名人でも、劇的な体験をした特別な人でも。

でも2人ともに共通している(と思う)のは 決して順風満帆とはいえない人生航路 不器用ながら、でもとても一生懸命に 生きようとされているということ。

そして、おそらくはプロの作家であれば そんなにはかけないだろうというくらい 時間をかけて、文章を編んできているということ。

そして 何の約束もないにもかかわらず まったく海のものとも山のものともつかない状況の 自分や、クルミドコーヒーを信じ ともに本をつくろうと思ってくれたこと。

3つ目は、とても「私」なことではありますが でも、そうした人柄や姿勢、 そして最後は 「いろんな選択肢があるけど、これをやる」ではなく 「自分にはこれしかないんだ」という 迷いや葛藤の末にたどり着く「腹を決めた」感じ 「弱いのに強い」感じ そんな感じを本に表現できたなら このことほど読む人を勇気づけるものはないだろうなと思ったのです。

それがどこまで成功しているかは分かりません。 でも一生懸命つくりました。

そして本当につくりたいものは その先にある(と信じている)ものです。 「表現」の先にあるもの。

そこから先は 望み得るなら、是非ご一緒に。

出会ってくださってありがとうございます。

影山 知明